コラム「みんなの医療制度」 その60

労せず増収になる理由―追っかけ点数ラッシュ

 繰り返しになりますが、2010年度診療報酬改定は、まさに「急性期の入院医療のための改定」といっていい内容となりました。

 恩恵を受けられるのは7対1、10対1のDPC病院が中心です。中でも救急患者をきちんと受け入れ、院内のチーム医療や地域医療連携によって平均在院日数の短縮に励んでいるような病院は、労せずして増収となるケースが少なくありません。

やはりメリハリ

 「メリハリ」を付けた財源配分というのが、ここ数回の改定の流れ(つまり財源がない)です。ただ、久しぶりに診療報酬本体部分に5000億円超の財源を充てることが可能になった今回は、メリハリを付けず「えいやっ、と入院基本料を引き上げてほしい」という要望も中医協でありました。

 入院基本料というのは、診療所の初・再診料とともに医療機関の基礎収入で、努力しようがしまいが、すべての医療機関にとって平等の点数です。これを上げるというのは、いわば“ばらまき”に近く、よほどの事情でもない限り、実施されにくい時代になってきています。

 というわけで今回の改定でも入院基本料の引き上げは見送られ、これまで評価したくてもできなかった努力を評価する点数のラッシュとなりました。

 その代表例が、「早期入院加算」(早期加算)「救急医療管理加算」(救急加算)「医師事務作業補助体制加算」(事務加算)「急性期看護補助体制加算」(補助加算)、「栄養サポートチーム加算」(NST加算)といった加算たちです。

 早期加算は入院14日までの入院患者を対象に算定できる加算で、これが428点から450点に引き上げられています。何もしなくても患者1人当たり220円(1日)が増収になるわけです。

 その次の救急加算は、地域の救急の要になっている2次救急病院を対象にしたものです。意識障害や昏睡状態で運び込まれた患者に対し、入院日から7日まで算定できる加算ですが、これが600点から800点になりました。30%以上のアップ率です。

 そして事務加算。勤務医の負担を軽減するため、医師の事務をサポートする医療クラークを医療機関が採用するための加算で、患者の入院初日に算定できます。

 前回のコラムでも触れていますが、これまでは25対1(25床ごとに1人以上の医療クラークを配置している場合)の355点という区分が最高でしたが、施設基準が厳しめで、算定できるのは大規模の公立・公的病院などに代表される第3次医療機関や小児救急医療拠点病院、総合周産期母子医療センターに限られていました。このため、地域の2次救急病院は25対1以上の医療クラークを採用していても、その次の50対1(185点)の点数しか算定できませんでした。

 それが今回の改定では、より点数が高い15対1(810点)と20対1(610点)が新設されるとともに、算定条件も緩和されました。上記の第3次救急医療機関や小児救急医療拠点病院、総合周産期母子医療センターではなくても、年間の救急入院患者数が800人以上であれば算定できるようになったのです。

 年間の救急入院患者が2000人に達するある民間病院は、これまでも15対1の水準の医療クラークを配置していたにもかかわらず、50対1の点数しか取れませんでした。しかし、今回の改定によって従来の185点から一気に810点に点数が跳ね上がります。実に4倍以上、金額にして6250円のアップです。病床規模が300床で月に患者が2回転すると仮定すると、375万の純増になるのです。

看護補助加算も

 金額ベースでさらに高い効果があるのが、看護加算。今回の改定で、看護資格を持たない補助者の配置を評価するこの加算が、急性期医療を担っている7対1、10対1の医療機関でも算定できるようになりました。

 14日を限度に120点(患者50人当たり1人以上、常時)、80点(患者75人当たり1人以上、常時)を算定できるようになったのですが、これももともと、この水準以上の補助者を配置している医療機関は少なくありません。増員せずに、月に1000万円以上の増収になるケースもあります。

 「NST加算」(週1回、200点)は、患者にきちんと口から食事をしてもらうことで本来の免疫力を高める狙いがあります。無駄な抗菌薬の使用を減らし、平均在院日数を短縮する効果があります。高知県の近森病院の取り組みが広く知られていますが、やはりすでに先駆的な医療機関は実施しています。

 ここまで書くと、今回の加算の意味合いがなんとなくお分かりいただけたのではないかと思います。

 つまり、先駆的な医療機関がすでに実施している努力に対し、診療報酬点数が追っかけでついたのです。過去のマイナス改定の中でも医療の質の向上と効率化に励み、努力してきたところは、労せず増収となる仕組みになっています。これまでの努力がようやく報われた改定、といったところでしょうか。