コラム「みんなの医療制度」 その59

DPC病院では喜びも半減?―10年度改定が答申

 上げ幅は0.19%とわずかながらも、10年ぶりのプラス改定となった診療報酬改定がようやく答申されました。

 医師の技術料をはじめとする診療報酬本体部分に充てられた財源は、プラス財源で得た700億円と薬価・医療材料の引き下げによって工面した5000億円を合わせた5700億円。プラス改定と同様、これだけの規模の財源を本体部分に充てられるのも10年ぶりとなりました。

入院、外来に異例の枠

 医科には、このうち4800億円が割り当てられましたが、今回は改定率が決まった昨年末の段階で入院4400億円、外来400億円という異例の枠が設けられました。入院の診療報酬を増額させることをあらかじめ打ち出していた民主党の強い意向が反映されたわけですが、この時点で診療所の再診料の引き下げはほぼ決定していたようなものです。

 これに対し、とりわけ勤務医の疲弊がかねて指摘されている救急、産科、小児科などの入院医療の増点を見ると、かなり潤沢なものになっています。

 例えば、地域の救急医療の中核を担っている2次医療機関を対象にした「救急医療管理加算」は600点から800点の30%アップ。さらに7対1、10対1の急性期病院では患者のケアに当たるスタッフを配置している場合の「看護補助加算」(120点か80点)が認められました。

 前回改定で創設された医療クラークの配置を評価する医師事務体制補助加算は、従来は25対1(25床ごとに1人以上)が最高でしたが、より手厚く配置できる15対1(810点)、20対1(610点)を新設。加えて25対1などの既存点数も引き上げられ、かなり人材を採用できるようになりました。14日以内の早期入院加算も428点から450点にアップしています。

 抗菌薬の適正投与や在院日数の短縮に貢献しているとされる「栄養サポートチーム」(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士ら)によるチーム医療にも新たに点数がつきました。末期の患者をケアする「緩和ケアチーム」(医師、看護師、臨床工学技士、理学療法士)も新たに評価されています。

後方病院も

 また、患者が救急搬送された急性期病院だけでなく、急性期を脱して状態がある程度安定した患者の受け皿となる後方病院も評価されています。

 大きなポイントは、地域の有床診療所や療養病床がこうした後方病院に位置付けられたことです。

 急性期病院などの患者を有床診療所の一般病床で受け入れた場合に、1日当たり100点(7日まで)を算定できる「有床診療所一般病床初期加算」が新設されたのがその例です。この加算の療養病床版である「救急・在宅等支援療養病床初期加算」は1日当たり150点を14日間算定できます。

 果たして療養病床が急性期患者の受け皿になれるのかどうかは議論のあるところかもしれませんが、とにかく厚生労働省はこうしたメッセージを発したわけです。

 急性期病院に話を戻しますが、手術料も難易度が高いものは大幅に点数が上がっているため、それなりの増収が見込まれています。ただし、それはあくまでも出来高ベースの話です。

 ある急性期病院では、こうした入院診療報酬のアップにより、年間収入が5%上回ることがシミュレーションの結果、判明しました。しかし、一般病床はすでに包括報酬のDPCに移行しているため、そのまま実入りになるわけではありません。最終的には2〜3%になるのではないかと踏んでいます。

 なぜでしょうか。ご存じのようにDPCによる診断群分類ごとの点数は全国の医療機関の標準点数で決まっているため、各病院で平均在院日数の短縮や薬剤コストの安い後発医薬品への切り替えが進むほど低くなります。「デフレスパイラル」と言われるように、包括点数は2年に1度の改定のたびに下がる傾向にあります。

自主退出ルールを活用?

 そのうえ、現在は前年度の収入を保証する調整係数により、収入の変動が大きくならないよう帳尻を合わせる仕組みになっています。今改定から、その調整係数が新しい機能評価係数に段階的に置き換わることになっていますが、今回の改定で置き換わるのは4分の1で影響額はさほど大きくありません。

 つまり、前年度並みの収入に合わせる調整係数がある以上、収入が大きく増えることはないのです。マイナス基調の改定が続いていたこれまでの改定では、マイナス改定で減った分を調整係数によってかさ上げしていたわけですが、こんどはプラス改定で増えたわけですから、調整係数で減らさなくてはなりません。

 むろん、出来高の病院は、点数を引き上げられた分がそっくり増収となります。昨年できた自主退出ルールを活用し、「DPCをやめて出来高に戻ろうかな」と漏らす病院関係者もいます。