コラム「みんなの医療制度」 その54

選挙の恨みは恐るべし――日医の中医協枠が消滅

 新聞などでも大きく取り上げられましたが、中医協から日本医師会の「指定席」がなくなりました。

 日本医師会の執行部から選ばれていた3人の委員が任期満了になったことに伴い、民主党の長妻昭厚生労働相がすべて入れ替える人事を決定しました。3人とも再任することは可能でした。

 事実上の団体推薦枠として温存されていた3人の指定席は減ることはあっても、正直、本当にゼロになるとは思っていませんでした。「選挙の恨み怖るべし」という感じです。

 いまさら触れるまでもありませんが、日医の政治連盟は民主党が圧勝した8月の衆院選でも、自民党を支持しました。それが今回の自民惨敗の結果を受け、「政権与党の自民党を支持する」という活動方針を見直し、民主党なども含めて幅広く関係を深めるという方針に大きくかじを切りました。

 つまり、自民一辺倒の姿勢でなく、各政党と「是々非々」の関係を構築することを初めて宣言したわけです。

●職域代表は支援

 その入り口として、自民支持をいったん白紙に戻す、ということができていれば、ひょっとしたら指定席がゼロになることは防げたかもしれません。

 というのも、日医の政治連盟は来年の参院選でも自民党の支援は続けるのです。組織内に医師でもある自民党の国会議員を抱えており、これまで機関決定によって行っていた支援をいきなりストップすることはできないからです。

 都道府県の医師会にも支援を続けることを要望する意見が多く、「自民党という立場ではなく、医師代表の国会議員として推すべきだ」という声もあります。日医の政治連盟の執行部もこうした意見を無視して、組織内議員を切り捨てることはできません。

 一方、民主党の某幹事長の以前からの振る舞いを見ていると、党の勢いを維持することが手段ではなく、完全に目的化してしまっているように思えます。そんな状況では、自民党を引き続き支援する日医の執行部を、中医協委員としてとどめておくという選択肢は毛頭なかったのでしょう。

 代わりに中医協委員に任命されたのは、現在の日医執行部と距離を置き、民主党の支持を打ち出している茨城県医師会の理事や、民主党議員ともつながりがある京都府医師会の幹部です。いずれも日医の会員でもありますが、組織としての拘束の効かない民主党寄りの人材ともいえます。

 実際、茨城県医師会の理事を中医協委員に任命したことについて、長妻厚労相は「われわれの政策に理解のある委員を選びたかった」と認めています。

 中医協から指定席がなくなったのは、日医だけではありません。日本薬剤師会の副会長も再任されず、枠を失いました。日薬も日医と同じで、先の衆院選で政治連盟が自民党の候補者を支援し、来年夏の参院選でも自民党の組織内候補者を擁立する考えですから、はなから再任の芽はなかったのでしょう。

●連合は団体推薦のまま?

 もっとも、2007年の中医協改革では、医師や薬剤師、歯科医師を代表する職域団体に委員を推薦してもらう「団体推薦制」が廃止されています。確かに、厚労大臣が委員を一本釣りする今回の人事こそ、この改革の趣旨にかなっているのです。

 ただ、同じように任期満了を迎えた健康保険組合や、民主の支持母体である連合の委員は、従来のような事実上の団体推薦に近い形で選任されています。つまり、指定席は温存されたままなのです。

 決して日医や日薬を擁護するつもりはありませんが、いくらなんでも「党利」を優先しすぎではないでしょうか。民主党内にもこうした見方をしている議員はいますが、某幹事長に進言できるはずもありません。

それにしても、日医というのはもはや、一般国民にとっては「悪」としてしか映らないのでしょうか。民意とまったくかけ離れたことを政治家(自民党)と結託して行っている。実際、そんな「紋切り型」のイメージからいまだ抜け出せてはいません。

思えば、前述の中医協改革で自民党の小泉内閣にさんざん叩かれ、今回、民主党の鳩山内閣からは完全に政策決定のカヤの外に追いやられるなど、日医と決別することがすっかり新鮮なイメージづくりの象徴になってしまっています。

 1人ひとりはまじめで患者から人望のある医師でも、団体となると旧態依然の雰囲気を醸してしまう――。日医会長選を取り上げた前回のコラムにも関係しますが、この際、いっそ政治と決別するような分かりやすい変化を見せることが必要かもしれません。

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