コラム「みんなの医療制度」 その52

地域医療再生基金もカット――「水ぶくれ」の補正予算にメス

  民主政権が、「景気対策」という名目の下で水ぶくれした2009年度補正予算に「大なた」を振るいました。ただ、全体的には「中なた」の印象を受けました。

 執行停止となった予算額は、政府全体でほぼ3兆円規模に達する中で、長妻昭大臣が所管する厚生労働省は6314億円を執行停止にしました。

 その中には、この欄でも何度か取り上げている「地域医療再生基金」も含まれています。当初は3100億円が計上されていましたが、750億円が削られ、2350億円という規模になりました。

 1回目の査定では見逃されましたが、その段階では目標とする3兆円にほど遠く、上積みを求められたことで仕方なく削減したというわけです。

 この基金は、都道府県が2次医療圏ごとに作成した5年間の計画に基づき、地域医療を再生させる事業に必要な費用を支出する設計になっています。計画は10月中旬までに厚労省に提出し、厚労省の有識者会議が中身を見た上で、どの計画に支出するかを決める予定でした。

 しかし、執行停止によって支出の対象となる計画数や、1計画当たりの予算額が大きく変動しました。

●94カ所に一律25億円

 1つの計画当たりに支出される予算は当初、100億円が10カ所、25億円が84カ所いう規模でしたが、今回の執行停止によって各都道府県2カ所、計94カ所に一律25億円を支出するという内容に縮小されました。

 ここぞといわんばかり、大規模な地域医療ネットワークの再編を目指し、100億円の計画を作成していた都道府県は25億円規模への縮小を余儀なくされるという、大幅な見直しを迫られました。

 それも与えられた時間はごくわずかです。執行停止に伴い、厚労省が地域医療再生計画に関する新たな通知を出したのが10月16日。

 その通知では、「100億円程度の地域医療再生計画を検討していた都道府県におかれましては、誠に申し訳ございませんが、担域の医師確保等の地域の医療課題の解決に向け、25億円程度の地域医療再生計画への見直しを行っていただきますようお願いいたします」と簡潔に触れた上で、さらっと11月6日までの提出期限を求めました。

 つまり、3週間程度で修正した計画を出せということです。実際、すでに100億円規模の計画も数件提出されており、怒り心頭の都道府県も多いのかと思いきや、実は厚労省はあらかじめ予防線を張っていました。

 都道府県に対して厚労省は当初から、100億規模の計画が審査段階で承認されなかった場合も想定し、「承認されない場合の25億円程度の計画」も提示するよう求めていたのです。この計画の骨格を決めた6月時点で、すでに政権交代を予期していたような周到さですが、とにかくさほどの混乱はなさそうです。

 一方、「野党」が定着しつつある自民党の医系議員からは、「削減ありきの中で、(3兆円の目標額に)足りないからといって750億円をやめるということを、地域に対してどう説明するのか」という不満が上がっています。

 確かに、崩壊した地域医療を再生する、というかなり喫緊の課題を解消するという基金の性格上、厚労省も都道府県の担当者も「いくら何でも切られることはないだろう」と高をくくっていた面はあると思います。

 ただ、個人的には「予算ありき」という、そもそもの設計が間違っていたのではないかと感じています。当面の医師不足を解決するために必要な即効性のある施策に対し、必要な予算を積み上げる、というのが本筋でしょう。無理矢理、使い道を見つける必要はありません。

 医療がある意味、雇用の受け皿となる産業である側面は否定しませんが、やはり社会保障を景気対策の材料にするとゆがみが生じます。どうしても予算を消化したいのなら、診療報酬改定の財源に回すべきではないでしょうか。

●未承認薬の開発も

 このほか、厚労省関係では、海外では使用されているものの、国内では承認を得られていないため使用できない未承認薬の開発促進にかかわる費用が753億円から100億円に削減されました。

 当初はイチから開発する医薬品だけでなく、すでにある医薬品について投与できる疾患の範囲を拡大する適応外薬の開発促進の費用も盛り込まれていたのですが、この部分がばっさりやられました。

 もっとも製薬業界は、特許期間中の新薬の薬価を下げないようにする「薬価維持特例」という制度の導入を要望する前提として、この予算とは関係なく、未承認薬の開発を進めるためのセンターを設置しました。

 今回削られた分は、補正予算ではなく、来年度以降の本予算に回る可能性もありますが、センター関係者は「予算がどうなろうと開発を進めるだけ」とたんたんと受け止めています。

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