コラム「みんなの医療制度」 その46

DPC病院で入院初期の点数を引き上げ――調整係数の廃止で

 来年度の診療報酬改定から、DPC病院の前年度収入を保証する調整係数が段階的に廃止されることが固まっていますが、それによって現行の包括報酬では採算が取れない特定の診断群分類では大きな影響が生じます。  

 つまり、これまではいくら赤字になっても調整係数があったため、赤字になった分の収入が自動的に補てんされ、病院経営に実際に与える影響はありませんでした。ところが調整係数が廃止されることで、赤字になった分がそのまま経営に打撃を与えてしまうのです。

 赤字になるのは、入院初期に投薬や検査、処置などを集中的に行う救急関連の診断群分類に多く、あらかじめ定めた包括報酬が出来高算定した場合の点数を大きく下回り、診療コストを賄えない事例があります。病院団体はこれまでに、救急関連については包括報酬でなく、使用した医療資源のコストを積み上げて請求できる出来高にしてほしいと見直しを求めていました。

 調整係数が段階的に廃止される来年度以降、現状の仕組みを放置したのでは、救急の受け皿がなくなりかねません。厚生労働省は何らかの対応を迫られたわけですが、結局のところ、出来高にするのではなく、入院初期の包括報酬を引き上げるという選択肢を示しました。

●出来高の平均まで引き上げ

 DPCの1日当たりの包括報酬は、入院期間 I (入院初日からその診断群分類の平均入院期間の短い方から25%の入院日数まで)、入院期間 II (入院期間 I の最終日から平均入院期間まで)、そこからさらに特定入院期間(平均在院日数+2標準偏差まで)までの入院期間 III――の大きく3つに分かれている。

 今回、引き上げるのは入院期間 I の報酬で、現在の包括報酬では採算の取れない脳卒中や急性心筋梗塞などの診断群分類に適用される見込みです。こうした診断群分類の入院期間 I の点数は、出来高方式に換算した点数の平均まで引き上げられ、採算が取れないということはほぼなくなります。全体の報酬は増やさない「財政中立」の観点から、 II の点数は引き下げられます。

 入院期間 II の包括報酬を減らすことで、「必要以上に患者を長く入院させる医療機関が減るのではないか」という期待も厚労省にあります。

 一方、こうした例とは逆に入院初期の包括報酬が出来高の点数を大きく上回るという事例もあります。例えば、網膜血管閉塞症や縦隔・胸膜の悪性腫瘍は、入院期間 I の包括報酬の点数が、出来高算定した場合の点数を大きく上回っています。このままでは必要以上の黒字が医療機関に及ぶことになります。

 このため厚労省は、こうした事例については入院期間 I の包括点数を引き下げることにしました。入院期間 I の包括報酬は通常、その診断群分類を治療するためにかかる平均的な点数の15%増ですが、これを10%増に引き下げます。前述の財政中立の点から、こんどは入院期間 II の包括報酬を引き上げます。

 おさらいをすると、来年度の診療報酬改定以降、DPCの包括報酬を算定する仕組みには、新たに(1)入院期間 I の点数を出来高の平均に合わせるもの(2)入院期間 I の点数が平均報酬の10%増――の2つの仕組みが加わります。包括支払いの診断群分類約1500のうちの20%がこの2つの仕組みの対象になるとされます。

 残りの80%は、入院期間 I の点数を平均報酬の15%増にする従来の算定ルールで対応する見通しです。

 また現在は、高額な抗がん剤を使用するがん化学療法に対し、入院期間 I の日数を通常より縮め(入院初日からその診断群分類の平均入院期間の短い方から5%の入院日数までにする)、高額の包括報酬を設定していますが、この仕組みが存続されるのか、新たに導入されるルールに統合するのか、まだ分かりません。

●高額薬剤はあくまで包括化

 こうした議論とは別に、包括報酬の中にあらかじめ含まれる薬剤費について、高額なものに限っては出来高で算定できるようにするべきだという意見もあります。

 現行の包括報酬は、保険に収載されたばかりの新薬や、病院ごとに投与量にばらつきがある一部の銘柄を除き、抗がん剤をはじめとする高額薬剤の費用についても診断群分類ごとの診療報酬の中に包括化されています。

 しかし、特に高額な薬剤を集中的に投入する入院初期については包括報酬では採算が取れず、医療機関が持ち出しで診療に当たっているケースがあります。冒頭の救急の例とほぼ同じで、調整係数の廃止後は包括報酬自体を引き上げるか、出来高にするかのどちらかの対応が求められているわけです。

 これに対して厚労省が選択したのは、入院期間 I の包括報酬の引き上げでした。出来高にすると、診断群分類の分岐が複雑になり、高額薬剤を使用しない患者との整合性を図ることが難しくなることなどが理由でした。抗がん剤を使用する悪性腫瘍の診断群分類については、入院期間 I の包括報酬を十分な水準まで引き上げます。

 ただ、HIV感染症や血友病などの治療薬については、ほかの疾患を併発した場合などに十分に費用が反映できなくなる恐れもあるようで、出来高にするようです。また、患者の状態が安定した慢性期の場合に限り、人工腎臓(透析)も出来高に移行することを検討しています。

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