コラム「みんなの医療制度」 その45

医療再生の小槌は都道府県に丸投げ――補正予算で大盤振る舞い

 DPCの話の続きは、中医協での議論が進展しないため、ちょっと持ち越します。

 米国発の経済不況を乗り切るための緊急対策として、過去最高の総額15兆円の2009年度補正予算が国会で成立しました。

 世紀の大盤振る舞いの傍ら、社会保障費の伸びを2200億円削るという、ちぐはぐな対応が続くのかと思いきや、来年度予算については撤回させることが決まりました。

 社会保障費の2200億円削減は、構造改革路線を突っ走った小泉内閣の置きみやげで、2011年度まで続けることが「骨太方針2006」に明記されています。すでに限界といわれて久しく、最近では医師不足対策などの関連予算が「別枠」として投じられることがままあります。

 すっかり形骸化しているわけですが、いくらぼろぼろになっても、社会保障費の効率化をうたった「財政再建の旗」は降ろせない、と判断した自民党執行部に対し、自民党参院議員会長で元厚生労働相の尾辻秀久氏らが強硬に反発。ついには与謝野馨経済財政担当相から来年度予算では2200億円を削減しない、との言質をとりました。

 今回の15兆円の中には、地域医療再生のための基金の創設が含まれています。財政再建の旗を降ろせないというならば、あらかじめ15兆円から2200億円を天引きしておけば良かったのに……とも思ってしまいます。

 来年度予算編成の骨格となる「骨太09」では、来年度の次の年以降、2200億円を削減するかどうかはあいまいになっています。だれもどうなるかなんて分かりません。次の政権が判断するのでしょう。

 一方、政権奪取に最も近いところにいるといわれている民主党は、次期総選挙に向けたマニフェストの中で、2200億円の削減は「撤廃」と書き込むようです。与党との違いを際立たせる狙いがあると思われますが、高速道路の完全無料化といい、いったい消費税を何%に上げれば民主党の公約を実行できるでしょうか?

●医療再生基金に3000億円

 話を補正予算に戻します。

 15兆円のうち厚生労働省関係分は約4兆7000億円で、こちらも過去最大となりました。先ほども少し触れましたが、その中の目玉が約3000億円を投じた「地域医療再生基金」です。

 一般的に国は予算は単年度に消化することが原則ですが、基金はプールした財源を複数年にまたがって消化することができます。地域医療再生基金に限らず、基金が多いのは今回の補正予算のポイントです。つまり、大盤振る舞いの方針だけが先行し、使い道が決まっていないのです。

 地域医療再生基金をどう使うかも、これから決めます。正確にいうと、地域に丸投げし、決めてもらうのです。都道府県に対して10月中旬までに、2013年度までの5年以内の「地域医療再生計画」を策定してもらい、その中でどんなことに基金の財源を活用するかを記載してもらうのです。

 この計画、原則として都道府県全域ではなく、2次医療圏が対象となるのですが、都道府県にしれみれば、ほとほとうんざりではないでしょうか。

 何しろこれまで医療制度改革という名の下で、医療費を減らす取り組みや目標を記した医療費適正化計画(08〜12年度)、小児、救急など4疾病・5事業の連携体制を記載した医療計画(多くが08〜12年度)、療養病床を削減するための手順を示した療養病床転換推進計画(07〜11年度)と、とにかく計画の策定を迫られました。

 都道府県立病院の経営改善や、再編の道筋を示した公立病院改革プランを策定した都道府県も多いことでしょう。

●難しそうな基金の使い道

 そして今回の地域医療再生計画です。

 果たして、どんな計画になるのでしょう。厚労省が作成した“ひな形”を見てみると、まずは計画の対象となる2次医療圏の現状分析、課題、そして具体的な数値を盛り込んだ目標を定め、それを達成するための具体的な施策や必要な費用を記載することになっています。その際、前述のさまざまな計画とも整合性を持たせねばなりません。

 ひとつ例を挙げれば、「たらい回し」などが問題視された産科救急では、数値目標のところで、NICUを何床確保する、周産期母子医療センターの後方支援病床を何床確保する、2011年度まで周産期母子医療センターの正常分娩取扱件数を月何件以下にする、といったことを書き込みます。医療計画をさらに細かくしたようなイメージですが、最後に「いくらほしい」と請求することがポイントです。

 勤務医の不足対策では、卒業後の一定期間その地域で勤務した場合に、医学部の奨学金の返還を免除する制度の拡充や、若手医師のスキルアップにつながる寄付講座の創設、医師の事務を補助するスタッフの増員などが具体的な対策として想定されています。やはり、マンパワーの確保が大きな課題になっているのでしょう。

 しかし、基金からの財源が続くのは遅くとも2013年度までで、その後も続ける場合には都道府県の持ち出しになります。そうなると当然、出し渋るでしょうから、もともと継続的に人件費や維持費などがかからない取り組みを提案する可能性があります。ふってわいた今回の基金の使い道は、結構難しいかもしれません。

 いうまでもありませんが、いくら地域医療を取り巻く環境が厳しいからといって、無理やり基金の財源を消化する必要はありません。もともと、ほとんどが借金なのですから。

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