コラム「みんなの医療制度」 その41

OTC薬ネット販売の規制が確定―患者の訴えで終止符

 政府の規制改革会議(議長=草刈隆郎・日本郵船会長)が規制改革の提言となる第3次答申をまとめました。

 終盤で最も注目されたのは、一般用医薬品(OTC薬)のインターネット販売をめぐる規制です。
厚生労働省は、従来、グレーゾーンだったOTC薬のネット販売の対象をビタミン剤や整腸剤など第3類医薬品に限定する方針を示したのに対し、規制改革会議は猛反発していましたが結局、答申に記載することを見送りました。

 これにより、6月からネット販売は第3類に限定されることがほぼ確定しました。
厚労省は近く、こうした内容を明記した改正薬事法の省令を示す予定です。とはいっても、本来は年内に予定していたのですから、大幅な遅れです。

 テレビや新聞でも結構、取り上げられていましたから、ご存知の方も多いかと思いますが、ことの経過をあらためて説明します。

●ネット業者は大あわて

 発端は厚労省が昨年9月に示した改正薬事法の省令案です。
この中に、ネット販売を第3類薬(分類の内容などについては「みんなの医療制度34」を参照)に限定することが明記されていたことで、反対派、慎重派による大きな争いに発展しました。

 突然、この方針が示されたわけではありません。
6月の薬事法改正以降のOTC薬の販売体制に関して議論をしていた厚労省の検討会が、7月に公表した報告書の中にもすでにこうした方針が示されていました。
厚労省の省令案は、この検討会の内容をなぞったものに過ぎません。

 あらかじめ予想できたこととはいえ、実際に省令案に書き込まれると、ネット販売業者は大あわてしたわけです。

 なぜ、ネット販売を規制する必要があるのかというと、現在は法的根拠のある規制が何もないからです。
厚労省は現在、法的拘束力のない「通知」という規定により、副作用のリスクなどが比較的高い風邪薬や解熱鎮痛剤などについては業者側にネットでの販売自粛を求めていますが、あくまでお願いにすぎません。

 ネット業者も当然、その通知の内容は知っているはずですが、法的な規制ではないため、風邪薬や解熱剤などについてもネット上で販売を開始しました。
消費者ニーズにも合致したのでしょう。売上げをぐんぐん伸ばしました。あまりに早いスピードで進む情報通信技術の発展に、法整備がついていっていなかったといえます。

 それが突如、省令案で「ネット販売は第3類薬に限定」と風邪薬や解熱剤などの販売禁止を省令案で宣告されたのですから、一気に反発ムードに火がつきました。
楽天をはじめ、業界団体の「日本オンラインドラッグ協会」などはネット上で規制撤回を求める署名運動を展開し、10万人の署名を舛添要一厚生労働相あてに提出しました。規制改革会議もこの動きに乗ったのです。

●6月からは対面販売が原則

 規制する側の厚労省の言い分は、リスクを伴う医薬品は原則、対面で販売されなければならない、というものです。
6月からはOTC薬を購入する際、風邪薬や解熱鎮痛剤などを含む第1類薬、第2類薬については、原則として薬剤師や登録販売者が対面で副作用リスクなどをきちんと説明することが求められます。

 薬剤師がドラッグストアにいたり、いなかったり、の従来のうやむやの状況に対する反省から、対面販売が原則であるとの「お触れ」を打ち出したのですが、ネット上の販売も合わせて規制しないと趣旨が徹底されません。こうした背景を踏まえ、ネット上の販売については副作用のリスクが低く、情報提供の必要がほとんど不要な第3類薬に限定されるに至ったわけです。

 かたやネット業界の言い分は、薬剤師らによる対面販売に劣らない情報提供は、ネット上でもできるというものです。実際、あるサイトを利用して解熱鎮痛剤の購入を試してみたのですが、確かによくできていました。

 あらかじめ「アレルギー症状を起こしたことがある」「胃・十二指腸潰瘍、重い肝臓・心臓・腎臓・血液の病気の診断を受けている」など、ことこまかな質問に答えなければならず、1つでも該当すると購入できないようになっていました。正直、ドラッグストアでの購入時に、薬剤師からこんな質問を受けたことはありません。

●ネット販売めぐり近く検討会?

 ただ、すべての業者がこうした良心的なサイトを運営しているとは限りません。
風邪薬の副作用で視力に重い障害を負った薬害被害者らの団体は、情報提供を業者任せにするのでなく、国が関与するかたちでしっかりとした仕組みをつくった上でネット販売を解禁してほしいと厚労省に訴えました。結局、こうした切実な要望が論争に終止符を打ったといえます。

 根拠に基づくネット販売の検証がされたとはいえない状況ですが、よほどのことがない限り、6月からはいったん、ネット販売できる医薬品は第3類薬に限定されます。が、厚労省は今後、ネット販売のあるべき姿を議論することは否定していません。良心的なサイトを運営するネット業者にとっては気の毒ですが、いずれ再開を視野に入れた検討会が開かれるのではないでしょうか。

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