コラム「みんなの医療制度」 その40

「中くらい」の社会保障制度へ―ぶれない?麻生政権

 「中福祉、中負担」。
これが麻生内閣が目指す当面の日本の社会保障制度の方向性です。

 首相になる以前から麻生氏はかねてこのフレーズを用いていたのですが、昨年末に閣議決定された、持続可能な社会保障制度の構築と安定財源を確保するための「中期プログラム」にはっきりと明記されました。この辺りは、ぶれていないようです。

 いまの日本はさしづめ「中〜高福祉・低負担」といったところでしょうか。
北欧型の「高福祉・高負担」でなく、受ける福祉サービスも出す負担のいずれも「中くらい」というのがいかにも日本人らしいように感じます。
「中福祉」の実現ですが、医療・福祉サービスの内容が現在の水準より高くなるということはあまり考えられません。
むしろ、現在の水準をなるべく維持し、どの程度の低下で抑えられるか、がポイントになります。

 医療分野では、医師の絶対数の増加や、地域での医師離れを加速させた一因とされている臨床研修制度の見直し、忙殺される勤務医の業務範囲を見直して看護師らコメディカルに委ねるなどの役割分担作業が当面の課題になるでしょう。
小児や産科の救急体制の充実も求められています。

 介護職の人材確保も急務です。介護を必要とする高齢者は増えるのに、支える人材がいないのでは話になりません。
3%の介護報酬の引き上げが決まりましたが、もっと大胆に財源を投入するべきでしょう。

●37%は借金

 こうした施策を実行するために必要になってくるのが「中負担」の実現です。
現在の低負担が中負担に強まるわけですから、確実に家計を直撃します。
米国発の経済不況にあえぐ直近の日本の台所事情はどうなっているのでしょうか。
昨年末に決まった2009年度の政府の一般会計予算案を見てみましょう。

 予算規模は歳入、歳出ともに88兆円ですが、前年度より5.5兆円増えています。
ですが、本来の収入である税収は、前年度より7兆円も減った46兆円にとどまっています。
税収が減っているのに、予算額が増えている。
この差額の穴埋めは、別の財布ともいわれる特別会計の切り崩しと、公債(借金)によって賄われています。

 借金のうち、公共事業を費用を調達するための建設公債は、2.3兆円増の7.5兆円、赤字を埋めるための特例公債は5.5兆円増の26兆円です。
借金は全部で33兆円で、全体の予算の37%(公債依存度)を占めています。
07年度、08年度ともに30%程度でしたが、再び上昇に転じたわけです。

 年金、医療、介護などの経費に回す社会保障関係費は前年度より3兆円増の25兆円です。
先ほどの公債依存度に照らし合わせると、この費用の40%近くを借金によって賄っていることになります。
つまり、現在の社会保障制度は、借金によってなんとかその水準を維持しているわけです。それが現在の「低負担」の秘密です。

 ですが、こんな状況がいつまでも続くわけがありません。
行き着くところはいつも、どうやって必要な財源を確保するのかという点です。
中期プログラムでは、経済状況が好転していることを前提に2011年度に消費税を引き上げるスケジュールが組み込まれました。
全額を社会保障財源に充てることも明記されています。
手っ取り早くいえば、「中負担」の実現というのは、消費税率の引き上げにほぼ置き換えることができます。

●財政再建は断念

 小泉内閣の置きみやげとなった「骨太方針2006」は財政再建を主眼にしており、5年間で社会保障費の伸びを1.1兆円抑制する方針が描かれています。
それもこれも、借金による収入と、借金返済の支払いを除いた基礎的財政収支を2011年度に黒字化するためです。

 現在の国の借金は増え続け、2004年度に499兆円だったのが5年間で581兆円に達する見込みになりましたが、基礎的財政収支が黒字になることで初めて借金の増加に歯止めかかるわけです。
ですが、厳しい経済不況の中、緊急経済対策などで借金の増加を余儀なくされ、11年度の達成は絶望的になっています。

 財政再建派である与謝野馨経済財政担当相ですら昨年末の経済財政諮問会議で、2009年度の予算編成に関連して「今年だけで、法人税を中心として当初見込んだものより7.1兆円も減収になり、その延長でものを考えるとかなり厳しい」と述べていました。11年度の基礎的財政収支の黒字化は断念せざる得ないということです。

 平成に入ってはや20年になりますが、国の予算規模と税収の格差は広がるばかりです。
つまり、予算規模はどんどん大きくなるのに、税収はどんどん減っていく。グラフにすると予算規模は右肩上がり、税収は右肩下がり。当然のように借金ばかりが増えていくわけです。

 われわれは、どの程度の社会保障サービスで満足するべきなのでしょうか。 国が過大に介入する「大きな政府」でも、極度に民間企業に委ねる「小さな政府」でもない、「中くらいの政府」を日本は目指してほしいと思います。

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