コラム「みんなの医療制度」 その39

とにかく増やせ後発品―促進策にかかる費用は「無制限」?

 特許が切れたジェネリック医薬品(GE)のシェアを何としても30%以上に引き上げる―。

その1点の実現に向け、厚生労働省がなりふり構わぬ作戦を展開しようとしています。

 なぜ後発品の使用を増やすのかといえば、いわずと知れた医療費削減のため。
安価で同じ効能・効果を持つといわれる後発品を使えば、国家財政、国民の医療費負担が減るからです。

 この4月には処方せん様式が2年前に続いて変更され、医師がわざわざ処方せんの「変更不可」の欄に署名しない限り、記載された先発医薬品を調剤薬局でGEに変えてもいいことになりました。
また、調剤薬局は1つでもGEを調剤した処方せん枚数が全体の30%を超えると4点の調剤報酬加算が得られるようになっています。

 医療関係者の「憲法」ともされる療養担当規則に、後発品をなるべく使用しなければならない義務規定が定められたのも記憶に新しいところです。
まさに国を挙げてGE使用を「誘導」しているわけです。

 2008年度の国の予算は、こうしたGEの使用促進によって220億円の医療費(国庫負担分)を削減することを前提に編成されました。
ですが、220億円が本当に削減されたかなんてだれもチェックできるわけがありません。
架空の数字合わせ、つまり「バーチャル」の世界の話なのです。


●バーチャルの数字合わせに失踪

 さあ、そのバーチャルの数字合わせに厚労省がさらに突っ走りそうな気配です。
2012年度までにすべての医薬品に占める後発品の割合を30%(数量ベース)以上にすると打ち上げた目標を達成するためです。
ただこれにより、どの程度の医療費が減るのかは未だ不透明です。

 厚生労働省保険局のGE担当者は、前述した4点の調剤報酬加算について、これまで枚数ベースで30%以上だった基準を数量ベースに改める方針を打ち出しました。
つまり、政府目標と同じ、それぞれの薬局で全医薬品使用量の30%以上でGEを使用すれば4点をもらえるようにしようというわけです。

 現行の処方せん枚数をベースにした基準は比較的満たしやすく、すでに全国の70%程度の薬局が算定しているとされています。
この基準さえ満たせば、さらにGEを使用する努力をしなくなる傾向も指摘されており、厚労省はさらに後押しする仕掛けが必要と考えているわけです。

 実際、薬局の薬剤師がGEの使用に積極的なのかといえば、決してそうともいえない結果があります。
 自ら店舗を開設する薬剤師(開局薬剤師)を中心につくる日本薬剤師会はこのほど、全国の2000薬局を対象に行ったGE使用状況調査の中間報告を発表しましたが、40%近くがGE使用に積極的に取り組んでいないと回答しています。

 その理由で最も多かったのは、処方せんを受け取る医療機関がGE使用に積極的ではないからです。
ある意味、仕方のないことかもしれないのですが、医療機関の意向どおりのことをしていればいいという受け身の姿勢が感じられます。

 薬剤師の「調剤権」は、医師の「処方権」とは切り離された薬剤師固有のものです。
今回の制度改正で、せっかく自らの判断と、患者からの同意でGEに変更できる裁量を与えられたのですから、もっと積極的に公使しないと薬剤師の存在意義すら問われかねないと感じます。
 ですが、医療機関がもともとGE使用に否定的であるのなら、やはり制度的に改善する必要があります。


●DPC病院に2重のインセンティブ

 DPC病院については、すでにあらかじめ決められた包括診療報酬の中で、GEを使えば使うほど利幅が増える仕組みになっています。
術後に使用量が多い抗菌薬などについて、全国の急性期病院でGEに切り替える動きが進んでいます。
 厚労省はそれに加え、さらにGE使用のインセンティブを高めるため、2010年度診療報酬改定から段階的に調整係数が廃止されることに伴い、新たな機能評価係数としてGE使用が多い医療機関の診療報酬を上乗せする案を検討しています。

 大学病院の関係者の中には、財政的な支援があればGE使用が進むとの意見もあります。
GE使用を加速させれば、新薬メーカーが行う臨床試験などにかかわる収入が止まってしまう可能性もあり、背に腹は替えられないというわけです。
ですが、2段階でGEの優遇策を設けることには「やりすぎだ」との慎重な声もあります。

 上記の促進策はあくまで入院のケースで、外来は関係ありません。
外来については以前、後発品を多く含む処方せんを発行した医療機関に対し、診療報酬を上乗せする仕組みがありましたが、財政的な事情で今年4月の診療報酬改定で廃止されました。

 厚労省内ではこの仕組みを復活させることも選択肢の1つに上がっているようですが、相応の財源がかかるためやや及び腰です。
厚労省のGE担当者は、医療機関が院内でGE使用を増やし、院外の調剤薬局に対して「変更可」の処方せんをたくさん出すにはどのようなインセンティブを与えるべきか、あちこちに声を掛けて情報を集めています。

 ただし、やはりGEの促進策、その原点は医療費削減のためです。
GE促進策のために投入する費用と、削減できる医療費の「費用対効果」の検証が必要です。


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