コラム「みんなの医療制度」 その37

医療政策は「茨城」から発信?−影響持ち続ける民主党

 それにつけてもいったい選挙はいつ…

 この時期、あちこちの会合に顔を出す国会議員のあいさつは、必ずこの話題に行き着きます。先日、落選中の参院議員の激励会があったのですが、激励に駆け付けたはずの自民党の衆院議員が逆に支援を求めていました。まさに、なりふり構わず、といったところです。

 麻生内閣の発足当時にマスコミで飛び交った10月26日の投開票はなくなり、いまは11月中の日程がささやかれています。10月26日説が「誤報」になったことを反省してか、新聞もずいぶん慎重な書きぶりになっています。

 さあ、かつての自民党の集票マシーン、日本医師会の政治団体(日本医師連盟)はどう動くのでしょうか。昨年夏の参院選挙では、日本医師連盟連が推薦した自民党の武見敬三氏が落選の憂き目に遭い、団結力のなさを内外に示しました。中でも茨城県の医師連盟は、武見氏を推薦する執行部の方針に逆らって国民新党の自見庄三郎氏を支援し、当選させました。

 こんどの衆院選でもやはり一枚岩となるのは難しいようです。日本医師連盟は早々と自民党を支持することを打ち出しましたが、例の茨城県医師連盟はなんと、県内のすべての選挙区で民主党の候補者を支持するとぶち上げたのです。

 その理由は極めて単純です。民主党が後期高齢者医療制度の廃止を打ち出している、その1点だけです。それ以外には何もありません。まさに郵便局を民営化するかどうかのみが争点になった2005年の郵政解散・総選挙をほうふつとさせる「1点主義」の決断です。

 茨城県には自民党の厚生族のドン、丹羽雄哉氏がいますが、茨城県医師連盟は例外なく支援しない方針です。その代わり、そのほかの歯科医師、看護師、薬剤師の政治連盟は丹羽氏を支持するようです。

●医師連盟をゆさぶり

 この機につけ込み、民主党は医師連盟の切り崩しに躍起です。これまで政治があまりかかわってこなかった診療報酬にも手を突っ込み、やはりなりふり構わず支援を取り付けようとしています。

 例えば、この4月の診療報酬改定で導入された外来管理加算の「5分ルール」の見直しです。これは診療報酬上の外来管理加算を算定する条件として、医師に対し、5分を目安にした患者への説明を求めたルールのことです。

 当時、中医協に出席していた日本医師会の委員も反対していましたが、虎の子の再診料の引き下げを見送る交換条件として、渋々のんだ経緯があります。ただ、現場の医師の間ではいまだに不満がくすぶっており、民主党は5分という時間の概念を廃止すると誘いをかけています。療養病床の削減も撤回するというエサも盛んにちらつかせています。

 医療界にとって最大のポイントは、やはり社会保障費2200億円の削減の流れを止められるかどうか、ということでしょう。民主党は機械的な削減はしないといっていますが、自民党も「もう削減は限界」という認識が高まっており、どうやら一息付きそうなムードが濃くなってきました。

●3分の2以上の維持は無理

 医療界がなぜ、これまで組織的には自民党を支援してきたのかといえば、それは単に「政権与党だから」ということにほかならないでしょう。政権公約の内容をさほど重視するわけでもなく、なんだかんだ言って選挙に強い自民党を支援してきたに過ぎません。

 ところが、今回の選挙はどちらかといえば民主党に分があると思います。民主党が勝てばもちろん小沢政権が誕生しますが、仮に負けたとしても与野党が逆転した参院でのねじれは解消されないからです。

 自民党は現在、参院で否決された法案を衆院で再可決し、政局をくぐり抜けていますが、こんどの選挙で自民党が勝利してもいまのように再可決に必要な3分の2以上の議席を確保するのは不可能でしょう。少なくとも、2年後の次の参院選までは民主党が影響力を持ち続ける政治環境は変わりません。

 であれば、なぜ医療界のほとんどの政治連盟は自民党支持を明言するのか理解できません。ぎりぎりまで民主党との間で両天秤にかけ、場合によっては茨城県のように民主党支持を明言するところがもっと現れてもいいのではないでしょうか。

 耳障りの良い政策ばかりを打ち出す民主党に対しては、「財源を明示していない」との批判がつきまといますが、安定財源の確保には結局のところ、消費税の引き上げしかないことはだれの目から見ても明らかです。個人的にはあまり大きな争点としてとらえていません。

 民主党は茨城県の医師連盟からの支持を受けたことで、医師会サイドの意見にも耳を傾けなければならないはずです。民主党が天下を取った場合には、医療政策は茨城県医師連盟を通じて決められる、なんてこともあるかもしれません。


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