コラム「みんなの医療制度」 その35

それぞれの悲喜こもごも−OTC医薬品の販売制度改正(下)

 一般用(OTC)医薬品制度の改正をめぐり、最後までもつれたのが最もリスクが高い区分に分類される「第1類医薬品」を扱う店舗の管理者の要件です。

 ドラッグストアなどを全国展開するチェーンドラッグ協会などは、一般の店員でも資格が取得できる登録販売者でも管理者になれるよう求めました。これに対し、薬剤師の団体である日本薬剤師会などはあくまで薬剤師に限定するよう要求し、真っ向から対立したのです。

 薬剤師会としては、薬剤師免許もないいわば「素人」に店舗運営を任せることはプライドが許さないのでしょう。かたや、多店舗展開するドラッグストア協会側にしてみれば、柔軟な店舗展開を可能にする上で店舗管理者は薬剤師で縛らないほうがいいわけです。人件費もかなり違ってくるでしょう。

 最終的には、第1類を扱う店舗の管理者は原則、薬剤師でなければらないことが厚生労働省の検討会で決定しました。ただし、管理者に薬剤師を充てることができない場合に限り、登録販売者であっても管理者の薬剤師の下で3年以上の経験を積めば管理者になれるという例外規定が盛り込まれたのです。

 いうなれば政治決着、双方のメンツを保った結論といっていいでしょう。薬剤師会はあくまで「原則は薬剤師」ということでとりあえずは納得し、ドラッグストア協会側にしてみれば例外規定を柔軟に運用することで、実際には多くの登録販売者を管理者に登用できると踏んだわけです。

 ここで問題となってくるのは、「管理者に薬剤師を充てることができない場合」とはどんな場合か、ということです。この基準をどこに置くかで、どちらにも有利に転ぶ結果となります。いったいどんな基準になるのか、厚生労働省が定める省令が注目されました。

 その省令案が先日、公表されたのですが、「管理者に薬剤師を充てることができない場合」について特段の定めはありませんでした。つまり、店舗の開設者がどんな事情であれ「薬剤師を管理者に置けない」と判断すれば、それで足りるという解釈です。「経営的に厳しいから」というのも立派な理由になります。

 その結果、論戦の第2ラウンドが始まりそうな気配です。薬剤師会側はあくまで省令で「管理者に薬剤師を充てることができない場合」を明示せよと求めています。一方のドラッグストア協会側は定める必要などないとの立場です。厚労省は10月中旬まで省令案に対して意見を募集しており、双方とも意見を提出する考えです。

●薬種商販売業は廃止に

 今回の制度改正のあおりを受けた業態の1つに薬種商販売業があります。医療機関から受けた処方せんに基づいて調剤を行う薬局や一般販売業(いわば調剤をしない薬局)とは違なり、薬剤師が店舗を管理する必要はありません。都道府県の試験を受けて合格し、薬種商販売業の許可を受ければOTC医薬品を販売する店舗を開設することができます。

 薬局や一般販売業に比べ、OTC医薬品を販売できるハードルが低い代わりに、販売できるOTC医薬品は制限されています。リスクが高いものなど、厚生労働大臣が指定するOTC医薬品(指定医薬品)は、販売できないことになっています。

 ただ、そうはいっても薬種商は医薬品の専門家であることに違いはありません。街の薬局でこれまで、消費者のセルフ・メディケーションの推進に一定の役割を果たしてきたのですが、今回の制度改正でばっさり廃止されます。新たに新設された登録販売者(都道府県ごとの試験にパスすれば資格を取得できる)に統合されるのです。

 薬種商には、全日本薬種商協会という組織があるのですが、これからどう店舗を運営し、存在感を示すことができるのか、頭を抱えています。何しろ、新制度ではこれまで一定の役割を果たしてきたことに対する既得権はまったく認められず、登録販売者の試験に合格したドラッグストアやコンビニなどの店員と何ら区別されなくなるのです。

 数年のうちに会の名称を全日本医薬品登録販売者協会に改める予定ですが、資本力を武器に台頭するドラッグストアやコンビニには到底太刀打ちできません。かといって調剤が行えるわけでなく、まさに正念場となります。

 この協会の幹部は、今になってもなお「これまで薬種商だった人は、第1類医薬品を売れるようにするなど、登録販売者とは区別してほしかった」とこぼしています。最もリスクが高い第1類医薬品は、登録販売者は扱うことはできないのですが、特別に配慮してほしかったという、いわば愚痴です。

 国の関与が強い医療、医薬品の産業は、制度変更1つでいきなり廃業の憂き目に遭うことがあります。決まってからいくら騒いでも手遅れで、日ごろから制度にかかわる動静をよくウォッチしておく必要があるでしょう。


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