コラム「みんなの医療制度」 その31

舛添厚労相の補佐に医師2人−福田改造内閣の行方は

 次期衆院選での自民党の浮沈をかけ、福田改造内閣がスタートを切りました。

 厚生労働相には大方の予想どおり、舛添要一厚生労働相が留任しました。安倍改造内閣、福田内閣に続き、通算で3度目の就任となりますが、実は厚労相の職に就いてからまだ1年しか経っていません。

 衆院選を控え、自民党内に舛添厚労相を交代させられるだけの“タマ”のないことが留任の最大の要因と思われますが、やはり1年程度でころころ大臣が代わることは決して望ましくありません。

 衆院や党執行部と一線を画し、独立した運営体制が敷かれている参院(自民党)では、原則として同じ人が2度大臣になることはありません。この暗黙のルールが踏襲されるならば、舛添厚労相も今後いくら参院議員として当選を重ねても、大臣はこれで最後ということになります。

●衆院に鞍替えか

 こうした暗黙のルールをめぐり、厚労省内からは最近の舛添厚労相の政治手法について、「次の衆院選で参院から衆院に鞍替えするのか、それとも民主党から出馬するための布石だろう」と勘ぐる意見が出始めています。つまり、このまま参院議員でいる限り、二度と大臣にはなれないのだから、視線はすでに「次」に向いて国民にアピールしているのではないか、という憶測が省内でささやかれているのです。

 舛添厚労相の政治手法としてぱっと思い浮かぶのは、官僚や自民党の厚生労働族議員を相手に「切った張った」の大芝居を演じることでしょう。小泉内閣よろしく、旧体制との対決姿勢を鮮明にするのはいいのですが、当然のことながら省内の求心力やモチベーションは低下し、党内ではあつれきを生んでいます。

 そんな気配を福田首相が察知したかどうかは知りませんが、今回の内閣改造では舛添厚労相をサポートする2人の副大臣に思い切った人材を登用しました。いずれも厚生労働、特に医療行政に精通している医師(医系議員といいます)で、そのうち1人の鴨下一郎氏は前環境相です。副大臣が2人とも医師ということも異例ですが、閣僚経験者を副大臣を充てることも極めて異例です。

 鴨下氏は、いわゆる厚生族議員といって差し支えないでしょう。ご本人いわく「厚生専門議員」なのですが、これまでに自民党の社会保障制度調査会の医療委員長、衆議院厚生労働委員会の筆頭理事(与党側の責任者)などを務め、医療行政はまさに専門中の専門です。厚労官僚からの信頼も厚いようで、厚労副大臣は2度目の再登板となりましたが、大臣から副大臣への「格下げ人事」に心境は複雑でしょう。

●実質的な決定機関、幹部会

 ここで、ちょっと政治の政策決定プロセスの流れに触れておきます。例えば、厚生労働関係の法案の見直しを例にとれば、表向きは与野党の論戦による国会審議で決定します。ただ、実質的には自民党の10人程度の厚生族議員が出席する「幹部会」の場で大筋が決められます。不定期に党本部やホテル、国会図書館の一室で秘密裏に開かれる会議で、マスコミもいつもアンテナを張り巡らしています。

 ここに出席できるのは、閣僚経験者や党の社会保障制度調査会長、厚生労働部会長、医療委員長ら厚生関係の重要なポストの経験がある中堅以上の議員です。ここに出らることが許されれば、自他ともに認める立派な厚生族議員といっても差し支えないと思います。

 なぜこんな非公式会議を開く必要があるのでしょう。政府、つまり厚労省はいきなり国会に法案を提出し、審議を求めることもできるわけですが、審議の手続きを円滑にするため事前に与党に根回しをし、了解を得ておくことが慣例となっています。

 この根回しの公式な場として、自民党には段階的に厚労部会、政策審議会、総務会という会合があり、最後の関門である総務会の決定を待ち、政府は法案を国会に提出します。総務会の決定を経たということは、自民党としてその法案の内容に賛成したという意思表示で、野党を説得して法案を可決する責任を政府に対して負うのです。

●小泉内閣でいったん崩壊

 ただ、皆さんの会社ではどうか分かりませんが、だいたいこうした公の会議でいきなり結論を出すよう求めても、なかなか意見集約できるものではありません。このため、強い発言力があり、反対分子を抑えられる実力者があらかじめ意見を統一させておく必要があるのです。この場が幹部会なのです。

 舛添厚労相が最も敵視しているのは、この幹部会の議員や彼らになびく厚労省内の幹部なのです。幹部会は厚労省の案に横やりを入れることなどもしばしばで、厚労省の“社長”である大臣にしてみれば、気に入らないのは当然です。

 ただ、官僚にとって実は社長は次官で、ころころ代わる大臣は「非常勤取締役」にすぎないという見方もあります。人事権すら持っているかどうか危ういのです。

 幹部会を頂点にしたこうした政策決定の仕組みは、自民党をぶち壊した小泉内閣でいったんは崩壊し、すべてが官邸主導で進められました。ところが、安倍内閣、福田内閣と時代が流れるうちに、いつの間にか元通りに復活した感があります。ただ、いまの「ねじれ国会」で事情は当時とやや異なりますが…

 厚生族議員らが副大臣として補佐に回ることになった舛添厚労相は、今後の調整で与党とどう折り合いを付け、立ち振る舞うのでしょうか。


English