コラム「みんなの医療制度」 その30

「DPC」の急速拡大にちょっと待った―次回改定で“締め出し”も

 Diagnosis(診断名)、Procedure(医療行為)、Combination(組み合わせ)。いまさら説明するまでもなく、この3つの用語を組み合わせたのがDPC。医療機関での診断群分類別包括評価による支払い方式のことです。

 もやは「DPCにあらずんば急性期病院にあらず」といわんばかりに拡大の一途をたどり、この7月にはDPC病院、準備病院を含め、DPCの支払い方式を導入する医療機関は1428病院にまで爆発的に広がりました。

 DPCを算定している一般病床は45万7301床に達し、全国の約90万床の一般病床のおおよそ半分がDPCの算定病床という状況になったのです。

 2003年度に特定機能病院を対象にスタートし、翌04年度に民間病院に拡大してから4年余り。まだまだ伸びそうな勢いですが、最近になってさすがに「ちょっと待てよ。このままでいいのか」という雰囲気が厚生労働省内にも立ちこめてきました。

 DPC病院が増えるのに従い、「本当に急性期を担っているの?」と首をかしげたくなるようなケースがちらほら表れてきているためです。

 厚生労働省のまとめでは、200床未満の中小病院がDPCを導入するケースは、04年度はわずか24施設だったのが、08年度には112病院に増えました。もちろん、中小病院でも立派に地域の急性期医療を担っているところは少なくありません。

●DPC後の患者を転棟

 ですが、中には急性期医療の一般病床と慢性期疾患の療養病床が半分ずつ、場合によっては療養病床のほうが多い「ケアミックス型」の医療機関も含まれていることが分かってきました。DPCを算定する一般病床の治療を終えた後、退院させずに院内の「亜急性期病床」や「療養病床」などへ転棟(床)させるケースも出てきています。

 DPC病院になるには、一般病床の入院基本料「10対1」以上でなければならないなどの要件があり、いずれの病院も満たしているわけですから、「ケアミックス型」だからといってDPCを導入しても決してルール違反ではありません。

 ですが、そこにルール変更が必要ではないか、というのが厚労省の考えなのです。そもそもDPCはあくまで急性期医療の標準化や効率化が狙いで、03年の閣議決定でも「急性期入院医療については、平成15年度より特定機能病院で包括評価を実施する」と記されています。

 「ケアミックス型」の扱いをめぐっては、今回の08年度改定でも議論になりました。厚労省はDPCの一般病床を出た患者については院内で転棟させるでなく、あくまで退院してもらうのが望ましいとして、病床数比率の規制を強め、条件を満たせない「ケアミックス型」をDPCから締め出す提案をしてきました。

 しかし、これには医療現場から、これまでの厚労省の政策に矛盾するとの強い反発が起きました。例えば、DPCの一般病床を出た患者の行き先となる「亜急性期病床」は、急性期を脱した患者の受け皿として04年度に設けたばかりの診療報酬上の病床の類型です。わざわざそういう受け皿を設けておきながら、そこに転床させることはけしからん、退院させろというのはおかしい、という指摘です。もっともです。

 結局、今回の診療報酬改定では病床数比率の規制は導入したものの、「ケアミックス型」も要件を満たすことができる緩い基準に落ち着きました。ただ、この基準をいじることでいつでも閉め出すことができる仕組みだけは設けたのです。

 実際、厚労省はあきらめません。7月16日の中医協の小委員会では、次回2010年度の診療報酬改定で「ケアミックス型」がDPC病院としてふさわしいかどうか、あらためて議論してほしいと求めました。ただ、先ほど触れた「亜急性期病床」や、回復期リハビリの機能をもつ「療養病床」などに患者を転院させることが本当に医療資源の有効活用の面から望ましくないのかどうか、厚労省がきちんとした考えを打ち出せない限り、また同じような議論になるでしょう。

●調整係数に代わるものは

 もう1つ、DPCにかかわる次回改定での重要項目に「調整係数」があります。DPCを拡大する激変緩和措置として設けた、DPCを導入する前年の出来高算定当時の収入を保証する係数なのですが、次回改定で廃止することがすでに決まってます。現在、係数が1より大きい医療機関は確実に収入が減るわけです。

 その代わり、調整係数に代わる新しい機能評価係数が新設されることになっています。現段階では例えば、医師が不足している救急医療や産科、小児科、高度な設備などを整えている医療機関を手厚くする係数を設ける案などがあります。また、医療計画で定めた役割を果たしている医療機関を評価しようという考えもあるようです。

 一部の識者からは、臨床成績などに応じて診療報酬を加算する「日本版P4P(Pay For Performance)」の導入を求める意見もあります。P4Pは、質の高い医療サービスに対し、経済的なインセンティブを与える支払い方式で、すでに米国や英国、カナダなどで導入されています。

 日本版P4Pでは、後発医薬品の使用率なども臨床成績の1つに加えてはどうかとの提案がありますが、そこまで思い切ったことができるかどうか…。


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