コラム「みんなの医療制度」 その22

もう1年様子を見ては−「療養型老健」の報酬決まる

 療養病床再編に伴い、あまり医療を必要としない患者が入院する療養病床の有力な転換先となる「介護療養型老人保健施設」の介護報酬の金額と、その点数を算定するための施設基準がようやく決まりました。

 当初は1月中に決定する予定でしたが、自民党の一部の議員が厚生労働省に対し、関係団体から時間をかけて意見を聞くよう求めたため、最終的な決定が3月までずれ込みました。その結果、4月からのスタートは間に合わず、新介護報酬の算定は5月からに遅れてしまいました。

 そもそも「介護療養型老人保健施設」(療養型老健)とは、どんな施設なのでしょう。あらためて振り返ってみます。  医療を受ける必要性が、医療機関の療養病床に入院する患者ほど高くない患者(医療区分1と医療区分2の一部)の受け皿として、介護保険制度の中に設けられる新たな介護施設の類型です。現在、こうした患者を多く入院させている医療機関の多くが、この療養型老健に転換することを想定しています。

 療養型老健で受け入れるのは医療の必要性が高くない患者といっても、いますでにある既存の老人保健施設(老健)に入院している患者よりは医療の必要性が高い患者です。このため、当初の検討段階では「医療機能強化型老健」などと呼んでいましたが、説明が複雑になるため、療養型老健の名称に改めました。

●療養病床と老健の間

 療養型老健には、既存の老健で不足している24時間体制看護の強化や、看取りの実施が求められます。その分、日常的な検査や診断、投薬などの費用を包括(一部は例外)した介護報酬(介護保健施設サービス費U)は、既存の老健よりも割高な1046単位(要介護5・多床室、1日当たり)に設定されました。一方、医療機関の療養病床の1322単位よりは低くなっています。

 この差は何が根拠なのかというと、主に医師や看護職員の人件費です。医療機関の療養病床には3人以上の医師がいなければなりませんが、療養型老健では1人いれば済みます。一方、看護職員については、療養型老健の方が既存の老健より多く配置しなければなりません。この差が実際の単価となって表れているわけです。

 療養型老健の介護報酬を算定するための施設基準は大きく2つです。

 (1)過去1年間の新規入所者のうち、医療機関からの入所者の割合が家庭からの入所者の割合を35%以上上回る(2)過去3カ月間の全入所者のうち「経管栄養」か「喀痰吸引」の実施している患者の割合が15%以上、または認知症の日常生活自立度判定基準がランクM(著しい精神症状や重篤な身体疾患がある)に当たる入所者の割合が20%以上―という条件です。

 この2つを満たしたうえで、夜間帯の看護職員として、入所者41人当たり1人以上を配置しなければなりません。入所者が40人以下の施設では、配置せずにほかの施設と連携することで可能ですが、その代わり、「介護保健施設サービス費U」よりもやや単価の安い「介護保健施設サービス費V」を算定することになります。

 ただ、(1)の基準についてはなお検討の余地があるとされ、1年先送りし、来年4月から適用することになりました。また、療養型老健は医療機関から転換した場合の受け皿となる施設であるため、既存の老健はこうした要件を満たしても療養型老健になることができません。ちょっと不公平ですね。

●看取り加算も

 療養型老健が算定できる介護報酬にはこのほか、患者を看取った場合の「ターミナルケア加算」(240単位、1日当たり)、入所者4人に対して1人以上の介護職員を配置している場合の「療養体制維持特別加算」(27単位、1日当たり)、感染対策などを講じた場合の「特別療養費」(種類によってさまざま)があります。

 「療養体制維持特別加算」は9割の施設が算定可能とみられていますが、2012年度の改定で廃止を含めて検討するようです。

 「ターミナルケア加算」は、利用者が死亡した日からさかのぼって最大で30日算定できます。ただ、算定できる入所者は(1)医師が回復の見込みがないと判断(2)入所者本人や家族の同意を得て、ターミナルケアの計画が策定されている(3)医師や看護師や介護職員らが少なくとも週に1回以上、ターミナルケアを行っている(4)入所している施設や入所者の自宅で死亡した者−の4条件を満たすことが必要です。

 また、療養型老健の常勤医師1人で365日24時間、患者の診察をすることは不可能ですので、夜間などに近隣の医療機関の医師が駆けつけた場合には、介護報酬でなく、診療報酬の「緊急時施設治療管理料」(5000円)が算定できます。

 介護報酬の改定は3年に1回で、本来なら次の改定は来年4月です。ですが、今回は政府の緊急課題である療養病床の再編を円滑に進めるため、療養型老健に限って1年前倒しで創設しました。

 ただし、この1年の状況によっては、来年4月の改定で療養型老健の報酬を引き下げるなんてこともあり得るかもしれません。療養型老健に移行するかどうかは、もう1年待ち、来年4月の本改定の動向を見てから判断しても遅くないでしょう。


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