コラム「みんなの医療制度」 その21

「勤務医対策」ホントに効果あるの?−08年度診療報酬改定

 2008年度の診療報酬改定が決定しました。無い袖は振れず、財源をどう工面するか最後の最後までもつれましたが、予定どおり4月1日から施行されました。

 今回の改定の目玉はなんといっても産科、小児科をはじめとする病院の勤務医対策です。財務省からプラス改定分の予算として獲得した約1000億円(医療費ベース)に加え、診療所の財源から移転した約500億円(同)を充て、さまざまな対策を講じます。

●事務補助者の人件費を支援

 まず、目新しいものといえば、書類書きなど医師の事務作業を代行する「医師事務作業補助者」(補助者)を医療機関が採用した場合の人件費支援です。医師でなくてもできる雑務から医師を解放することで、本来の診療業務に専念してもらう狙いです。

 支援を受けられるのは急性期病院だけです。配置した補助者の人数に応じ、患者の入院初日に一度だけ、355点(25対1、3550円)、185点(50対1、1850円)、130点(75対1、1300円)、105点(100対1、1050円)の4種類の「医師事務作業補助体制加算」のいずれかを請求できます。

 どれを請求できるかは、一般病床数と補助者の人数の比率で決まります。例えば、最も高額な355点は25対1、つまり一般病床25に対し、1人以上の補助者を配置している場合に請求できます。平均在院日数が15日で、300床の医療機関(補助者12人を配置)であれば、単純計算で月に約210万円が入ってくることになります。

 ただし、355点を請求できるのは、都道府県の中で特に重症の救急患者を扱うことが定められた「第3次救急医療機関」「総合周産期母子医療センター」「小児救急医療拠点病院」と呼ばれる医療機関に限られます。一般的な急性期の医療機関が請求できるのは、185点以下になります。

 この補助者が具体的に何をするのかというと、カルテの記入代行、院内の会議資料や国などに提出する統計資料の作成などです。例えば問診中、医師の傍らで電子カルテをカタカタと入力する場面などが想定されます。診療報酬請求などの医療事務は、もともと医師の仕事ではないため、行ってはいけません。

 この補助員は6カ月以上の院内研修(OJT)を受ける必要がありますが、厚生労働省はこの研修期間内も人件費支援を受けることを認める方針です。

●診療所の夜間診療に加算

 病院の時間外外来に殺到する患者を診療所に振り分ける仕組みづくりにも着手します。夜間・早朝の時間帯に診療所が診察を行った場合の加算は現在、あらかじめ掲示している通常の診察時間内であれば請求できません。例えば、午前10時から午後8時までの診察時間を掲げる診療所は、午後6時以降の夜間に診察しても加算を請求できません。

 今回の改定ではこの方式を改め、午後6時〜午後10時までの夜間と午前6時〜8時までの早朝の時間帯(平日)に診察するのであれば、通常の診察時間内であっても患者から50点(500円)の加算を請求できるようにします。また、午後10時から翌午前6時までの深夜帯は従来の深夜加算が請求できます。

 インセンティブを与えることで夜間・早朝帯に診察する診療所を増やし、少しでもそちらに患者を仕向ける狙いです。  「入院時医学管理加算」と呼ばれる急性期病院の加算も全面的にリニューアルします。一定の要件を満たせば、1日当たり120点(1200円)を患者が入院してから最大で14日まで請求することができます。厚労省は、ここから得られた収入を勤務医の待遇改善などに充ててほしいと考えています。

 一定の要件には、外来患者を減らすための取り組みや、補助者の配置、地域の医療機関との連携、医師の当直が連続することがないシフトを組むことなどを求めています。また、入院患者に対する麻酔件数が年800件以上という定量的な要件も設けています。

●財源の無駄?

 さて、問題はこうした取り組みが病院勤務医の負担軽減につながるかどうかです。 日本医師会は診療所に対する早朝・夜間帯の加算の新設には、最後まで反対しました。診療所にそんな財源を回す余裕があるのなら、病院に回してほしいと訴えたのです。

 今回の診療報酬改定では、日医が最も敏感に反応していた再診料の引き下げは見送られました。あえて診療所の早朝・夜間加算の財源を差し出す主張をするのは、再診料の引き下げを回避するための予防線だったという見方もできますが、ある日医幹部は「あの加算は、財源をどぶに捨てるだけ」と切り捨てています。

 確かに、いまもすでに午後8時まで開業している診療所は自動的にこの加算が付くわけで、中医協の議論でも一部の委員から「すでに夜間診療をしている診療所にまで(報酬を)出すのはいかがか」との意見が出ました。

 こうした慎重論を押し切ってまで厚労省が早朝・深夜加算の創設に踏み切ったのは、勤務医対策を実施していることを対外的に分かりやすく示したかったためと思われます。仮に、勤務医の負担軽減に結び付かなくでも「まず叩かれるのは診療所」という読みがあるのかもしれません。


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