コラム「みんなの医療制度」 その20

大阪府医師会の対応は−日本医師会長選挙近づく

 1月4日に日本医師会(日医)の唐澤人会長(64)が小脳出血で倒れ、東京都内の病院で緊急手術を受けました。昨年末の診療報酬改定率の決定をめぐる折衝の疲労がたたったとみられていますが、命に別条はなく、順調に回復しているようです。2月17日に退院しました。3月から公務に復帰するとのことです。

 そして4月1日には、2年に1度の日本医師会長選挙を迎えます。唐澤氏の体調回復を待ち、出身母体の東京都医師会を中心に選挙の準備に取り掛かるようです。

 唐澤氏がもう2年間、激務の日医会長職に耐えられるのか、体調面でやや不安はあるものの、すでに北海道、東北、関東甲信越、中部・北陸、中国四国、九州の医師連合は、唐澤会長の続投を表明した場合に支持することを決めています。

 日医の会長選は、各都道府県ごとの医師会単位でなく、ブロックごとに対応を協議するのが慣わしになっています。もちろん、ブロックごとに協議しても支持を一本化できるとは限らず、結果的に個別の都道府県の対応になることもあります。

●内紛

 一方、いまの日医・唐澤執行部にやや距離を置いている近畿地域の医師会は、日医会長選の対応をまだ決めていません。中心となる大阪府医師会はいま、内紛状態に突入しています。

 2月14日に行われた府医師会長選挙では、唐澤執行部への対応が争点になりました。現職の酒井國男会長は「是々非々」、一方の対立候補の伯井俊明氏(前日医常任理事)は「打倒執行部」を掲げて出馬したのです。

 いずれもいまの執行部の対応には満足していませんが、酒井氏はあくまで内部からの改革を訴えるのに対し、伯井氏は4月の日医会長選で対立候補を擁立し、いまの執行部を倒すことが重要と主張したのです。

 わずか1期で倒れた日医の前執行部では、植松治雄会長や伯井氏を含む近畿勢の役員が実権を握っていましたが、今回の府医選挙では、前執行部が路線の違いから植松・伯井、酒井氏の両陣営に分かれて戦いました。

 その結果、わずか1票差で酒井氏が当選しました。僅差ではあるものの、伯井氏も「負けは負け」であることを認め、事態は収束に向かうはずでした。つまり、日医会長選に大阪府医から対立候補は出なくなったということです。

 ですが、選挙から1夜明けて事態は一変しました。選挙では、2人の候補者のいずれかに○を付ける投票用紙が採用されましたが、直接候補者の名前を書く投票用紙が1枚混じっていたのです。単純な事務局側のミスですが、その1枚に当選した酒井氏の名前が書かれていたのですから物議を醸しました。最終的に議長の判断で有効票となったのですが、まさに勝敗を分けた1票となりました。

 伯井氏側は当初の「負けた」との主張を一変させ、選挙の無効を主張。争いを法廷に持ち込む姿勢も見せています。一方の酒井氏側は、選挙は有効であると譲らず、勝敗の行方はこんとんとしています。2月25日現在、決着は付いていません。

●再診料の引き下げは回避

 ちなみに08年度の診療報酬改定では、日医が最も反対していた診療所の再診料の引き下げが見送られました。厚労省は当初、再診料を引き下げて病院の勤務医対策に充てる算段でしたが、日医が猛反発した結果、見送られました。

 報道では「厚生労働省が開業医の利権に食い込めなかった」という見方が多いのですが、必ずしもそうではありません。再診料が引き下げられなかった代わりに、軽いやけどの手当てなど軽い処置が初再診料に包括化され、実質的には2点の再診料の引き下げとなりました。

 初再診料に包括化されるのは、「熱傷処置」(135点)のうち、「皮膚が赤くなる程度の熱傷で狭い範囲のもの」、「皮膚科軟膏処置」(45点)のうち「狭い範囲の軟膏塗布、「耳処置」(25点)のうち「点耳・簡単な耳垢栓除去」などです。

 なぜ、こんなことになったのでしょう。中医協の医療経済実態調査(2007年6月分)では、一般診療所全体で最も収支差額率が高かったのが皮膚科の31.5%(246万円)。次いで耳鼻咽喉科の27.7%(186万円)、精神科の27.5%(255万円)、眼科の24.4%(233万円)などが続いたからです。

 つまり、皮膚科や耳鼻咽喉科などの医師に狙いを定め、報酬を引き下げた結果です。日医会長選には、こうした診療科の動きも無視できません。


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