コラム「みんなの医療制度」 その19

08年度診療報酬改定−わずかに引き上げ

 2008年度の診療報酬改定率が決まった。医師の技術料に充てる本体部分は0.38%増。実に00年度改定以来、8年ぶりのプラス改定となった。  しかし、薬価を含めた医療費全体では、0.82%のマイナスとなる。薬価の引き下げで医療費全体は切り詰めながらも、本体部分にはかろうで0.38%を上乗せしようという決定である。

 約32兆円の医療費はおよそ4分の1が国庫から支出されているため、8兆円の0.38%に当たる約304億円が本体部分に上乗せされることになる。

 8年ぶりの引き上げとはいえ、医療界からは不満が噴出している。「0.38%、たかが304億円で医療崩壊が救えるのか」というわけだ。これでは地域で深刻さを極める医師不足などは到底解決できず、軒並み「焼け石に水」という論調である。

●福田首相の出る幕はなく

 今回の改定率がどのように決まったかというと、最初から最後まで自民党主導だった。当時の小泉純一郎首相のトップダウンで決まった2年前の改定とは打って変わった。福田康夫首相や額賀福志郎財務相、舛添要一厚生労働相ら政府側は自民党の決定を追認しただけである。

 自民党の中でも中心的な役割を担ったのは、いわゆる厚労族議員のドンである丹羽雄哉氏、社会保障制度調査会長である鈴木俊一氏、厚生労働部会長の衛藤晟一氏、医療委員長の大村秀章氏の4人である。

 日本医師会などの関係団体と連日折衝するなど、緊密に連携をとりながら最後は厚労省から304億円を絞り出させた。これまでの自民党のやり方そのものである。

 いわば、改定率決定の当事者でもある日本医師会は、「満足のゆく額ではないが、精一杯対応してもらった」と与党に気を遣っている。

●乾いたぞうきんを絞る

 実際のところ「たかが304億円」ではあるが、工面する厚労省にしてみれば「乾いたぞうきんをさらに絞る」のに等しかった。

 何しろ、医療費を含む08年度の社会保障費全体を2200億円削るという歳出改革は、政府の公約として堅持することが前提なのである。2200億円を削減することすらままならない厚労省にとっては、医療費を引き上げることなど二の次だった。

 2200億円の削減は結局、薬価の引き下げや安価な後発医薬品への切り替えに加え、健康保健組合などが協力金を支出してくれたことでかろうじて達成することができた。そのうえで、304億円を何とかひねり出したのである。

 ちなみに厚労省の08年度予算総額は22兆1179億円である。一般の感覚からすると、これほどの額から304億円しか切り出せないのか、という思いは確かにある。けれど、どの部署だって予算を削られることには反発する。よほど強力なトップダウンがなければ不可能だろう。

●歳出削減はあと3回

 社会保障費を毎年、2200億円削るという歳出改革は07年度から2011年までで、政府が撤回しない限りまだあと3年続く。  実際、今回も健康保健組合などからの協力金が得られるかどうか、土壇場まで不透明だった。協力金を得られなければ、医療費増はおろか、政府の予算が組めなかったのである。与党幹部らが水面下交渉で健康保健組合側に「今回限り」と頼み込み、ようやく首を縦に振ってもらったのが実情である。

 自民党の鈴木氏は「もう来年以降、2200億円を削減するのは無理」と公言している。支出が削減ができなければ、収入を増やすしかない。行き着くところはいうまでもなく、消費税の増税だ。次の衆院選の最大の争点になるであろう。


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