コラム「みんなの医療制度」 その8

療養病床再編で国が追加の支援策−借入金の借り換えも

 療養病床の再編(医療制度改革のポイント⑩を参照)の動きが停滞しています。

 再編計画は、医療の必要度が低い「医療区分1」の患者が入院する療養病床を多く抱える医療機関は原則として、介護老人保健施設など介護保険施設に移行することが前提です。ですが、厚生労働省の調査によると、老健施設などへの移行を予定しているのは1割にすぎません。経営の見通しがつかない中、6割が医療機関としての存続を望み、3割が転換先を「未定」としています。

 厚労省もこれまで、医療機関が療養病床を老健施設などに転換する際の支援策を設けてはいます。

 例えば、老健施設などに移行するまでの緊急避難として、医師らの配置基準を緩めた「介護保険移行準備病棟」という類型を診療報酬上に設けました。また、本来8㎡必要な老健施設の1床当たりの面積を当面6.4㎡で可能とする設備基準の緩和など行い、あの手この手で転換を誘導しようとしています。ですが、いずれも決め手に欠くのが実情です。

●借入金に悩む医療機関

 このため、厚労省は6月20日に追加の支援策を打ち出しました。そこには、医療機関が最も必要とする即効性ある資金面の援助なども盛り込まれています。

 療養病床の再編では、2011年度で介護保険の療養病床(介護療養病床)は廃止されます。ただ、そもそも介護療養病床が創設されたのは介護保険制度のスタートと同時の2000年度で、まだ7年程度しかたっていません。介護保険制度に合わせて介護療養病床を整備した多くの医療機関はまだ当時の借金を抱えており、そのうえ老健施設などに転換する資金的な余裕などないのです。

 自民党の厚生労働部会でも、厚労省に対して「10年足らずで勝手に介護療養病床を廃止することを決め、さらに介護保険施設に転換するため医療機関にまた借金をしろというのか」と、制度変更に振り回される医療機関側の怒りを代弁した意見も出ました。

 そこで厚労省は、介護保険制度の開始前後の借入金の返済負担を軽減することに目を付けました。08〜11年度までの時限措置として「療養病床転換支援貸付金制度」という制度を設けることにしたのです。

 まず、介護療養病床の整備資金を厚労省所管の独立行政法人・福祉医療機構(WAM)から借りている医療機関については、返済期間を10年延長し、30年にします。また、借入先が民間金融機関の場合にはWAMを通じて借り換え、返済期限を最大30年に延長します。これにより、月々の負担額は最大で半減するとみています。

●医療強化型老健の介護報酬は前倒し

 合わせて、転換した老健施設でも一定の医療行為ができるよう受け皿を整えます。こうした老健施設を「医療機能強化型老人保健施設(仮称)と名付け、24時間態勢で看護師を配置し、ほかの医療機関との連携体制も整備します。医療強化型老健を対象にした新たな介護報酬については、09年度の定期改定を待たず、来年4月から1年前倒しで設定します。 

 さらに、医療機関に対して特別養護老人ホームの設置を認めるほか、19床以下の有床診療所が老健施設に転換しやすくする規制緩和も実施します。

 ただ、それでも療養病床を老健施設に転換するかどうか、判断に悩む医療機関は多いでしょう。比較的人員確保が容易な一般病床(15対1)に転換する医療機関も中にはありますが、「中途半端」な急性期病院になるのはお勧めできません。全体の動きがはっきりするまで、もうしばらく待つのも選択肢の1つかもしれません。