コラム「みんなの医療制度」 その5

いつまで海外にツケを回すのか−臓器移植法改正にけりを

 今年の通常国会も6月23日の会期末まで残すところわずかになってきました。例年、野党の抵抗などで会期末までに重要法案が処理できず、延長されることがしばしばですが、今年はそうはいきません。

 7月に参議院選挙があるからです。安倍政権の浮沈をかけた選挙であるため、与野党とも必死です。残りの国会は、与野党ともにかなり選挙を意識した戦いになることが想像されます。

 ところで、この国会に臓器移植法の改正案が提出されているのをご存知でしょうか。臓器の摘出要件を緩和するのが狙いです。

 1997年に施行された現行の臓器移植法では、臓器を提供できる年齢が15歳以上に限定されているのに加え、本人の書面による意思表示(いわゆる臓器移植カードなど)と親族の同意があって初めて摘出が可能になります。海外諸国の中でも極めて厳しい要件となっているのです。

●いまだ実施は50例

 このため、当然のことながら日本での脳死移植ははかどらず、施行から10年後のいまも実施は50例程度にとどまっています。

 とりわけ、臓器移植でしか助からないと診断された14歳以下の子どもは、日本ではただ死を待つしかありません。そこで、いても立ってもいられない両親や支援者がカンパを募り、数千万円の資金を持って海外に臓器を「もらい」に行っているのが実情です。

 ただ、その国にも当然、移植を待っている子どもはいます。にもかかわらず、日本人を受け入れてくれるのです。本来なら日本で救える命であるにもかかわらず、そのツケを海外に回しているのです。

 それを何とかしようというのが臓器移植法改正案で、自民、公明両党の有志から議員立法の形で2種類の法案が国会に提出されています。遺族の書面による承諾があれば本人の意志が明確でなくても臓器摘出ができるA案と、臓器提供の意思表示ができる年齢を12歳以上として明記するB案です。

 そもそも現在の法案に、年齢制限は明記されていません。意志表示が可能な年齢を「15歳以上」としている民法にならい、運用指針で定めているのにすぎないのです。A案は本人の意志表示がなくても臓器を摘出できるようになるため、事実上、年齢制限が廃止されることになります。

 これに対し、B案は15歳以上から12歳以上に緩和するものの、あくまで本人の意志表示が欠かせないという現行法を踏襲しています。11歳未満からの臓器摘出の道は閉ざされたままです。

 個人的にはA案を支持していますが、あとは政治の決断を待つばかりです。

 ところが、いつまでたっても行動に表れません。実はこの2案が国会に提出されてから、すでに2年以上が経過しているのです。国会は通常、重要性が高い政府案を優先して審議します。このため、いつも最後の段階で時間切れになり、「継続審議」という形で今まで先送りされてきたわけです。

●今国会も処理法案が山積み

 今国会でも、審議の入り口となる衆院厚生労働委員会では安倍政権が重要視する社会保険庁改革関連法案などの処理が山積みで、通常のタイムスケジュールであれば成立は絶望的です。

 臓器移植の対応は重い課題であるため、自民・公明の与党のほか、民主党も2案のいずれかを支持するかは党議拘束をかけない考えです。このため、「急いで審議する必要はない」という意識が国会議員の間で働いているのも確かです。

 ただ、「いい加減、たなざらしはまずい」という声が党幹部を中心に強まってきているのも確かです。こうしている間にも、海外に臓器を求めて旅立つ人がいます。自民、公明両党の幹事長は4月、いまの国会でできるだけ臓器移植法改正案の成立を目指すことを確認しました。ただただ、政治の決断を求めるばかりです。


English