コラム「みんなの医療制度」 その4

厚生労働省が「総合科」の新設を提案−診療科も整理

 内科、外科、診療内科、脳神経外科、気管食道科…

 病院の入り口で、診療科名がずらりと並んだ看板を目にしたことがある方はきっと多いでしょう。でも、頭痛もあるが腰痛もある、といった症状の場合、いったいどの科を訪ねればいいのでしょうか。各科をたらい回しさせた挙げ句、結局、理由が分からないなんて話は良く聞きます。

 患者をそんな状況から解放しようと、厚生労働省が新たに「総合科」を設ける提案をしました。臓器ごとではなく、体全体を診療する科を意味し、患者がまずは「総合科」の門をくぐる仕組みをつくろうというわけです。各科の専門医を多忙な外来から解放し、入院医療に専念してもらう狙いもあります。

 ここで現在の診療科はどのようなあるかを振り返ってみます。医師や歯科医師が医療機関に掲げることができる診療科名は、医療法の政省令で定められた38種類(下記)に限られます。

 内科、心療内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、胃腸科、循環器科、リウマチ科、アレルギー科、小児科、外科、整形外科、形成外科、呼吸器外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、こう門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、リハビリテーション科、歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科、麻酔科

●麻酔科を除き、自由に標榜

 麻酔科を除き、医師が医療機関にどのような診療科を掲げるかは自由(自由標榜制)です。内科しか診療経験のない医師が開業した後に、脳神経外科を掲げることも可能です。ただ、麻酔科に限っては、麻酔科に従事した経験年数や症例の基準を満たし、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。

 お分かりのように診療科はかなり細分化されています。今の医師はこのいずれかの専門医を目指す傾向にあり、自分の専門領域以外は診ることが出来ません。これから先、複合的な疾患を抱える高齢者の増加などに対応するには、総合的な診療能力が不可欠なのです。

 厚労省の案によると、「総合科」には内科、小児科を中心に診療科全般で高い診療能力などを求めており、麻酔科と同じように当面は厚労大臣の許可にするということです。

 しかし、医療系団体からはあまり好意的な反応は聞こえてきません。「総合医」自体の発想は同じなのですが、「あくまで学会など医療界が主導して認定するたぐいのもので、国が口出しするべきではない」と反発しています。

 現に日本医師会や関係3学会(日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会)などは、総合的な診療能力をもつ医師の研修プログラムや認定制度づくりに向けた作業に取りかかっています。

●診療科も合わせて整理

 厚労省は併せて、現行の診療科を分かりやすくするため、現行の38種類を「基本的な領域」の26種類(下記)に整理する方針も打ち出しました。整理する傍ら、総合科に加えて病理診断科、臨床検査科、救急科、総合科を追加します。

 内科、小児科、皮膚科、精神科、外科、整形外科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、脳神経外科、放射線科、病理診断科、臨床検査科、救急科、形成外科、美容外科、リハビリテーション科、歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科、麻酔科、総合科

 厚労省案によると、見直し後に診療科を掲げる場合には、大分類となる「基本的な領域」の26診療科に、体の部位や症状などの小分類を組み合わせて表記します。例えば「内科」の後に「一般」や「アレルギー」などと記載するわけです。

 また、自由標榜制によってこれまで幾つでも診療科を掲げることができましたが、見直し案では1人の医師が掲げることができる診療科は「主」となる2つまでに限定します。3つ以上を表記する場合には「主」でなく「従」として扱われ、文字を小さくするなど区別できるようにしなければなりません。

 しかし、厚労省は関係学会に「根回し」をしないまま打ち上げたようで、とりわけ整理された学会からは反発があります。「総合科」の新設とともに、実現性までの道筋は定かでありません。


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