コラム「みんなの医療制度」 その16

勤務医の負担軽減策を打ち出す−初再診料を引き替えに

 厚生労働省は来年度の2008年度診療報酬改定の最大のテーマに「勤務医の負担軽減」を挙げています。

●夜通しでまた外来

 午前中は外来、午後は手術に追われ、さらに夜間の当直をこなし、場合によっては翌朝からまた外来に突入−。こんな激務が続けば、だれだって嫌になります。さっさと足を洗って開業したくなるのも無理はありません。

 勤務医の負担軽減を診療報酬で何とかできないか。それが今回、厚労省に与えられた命題です。

 そこで何を考えたかというと、勤務医の仕事の一部を開業医に担ってもらうことです。午後五時でさっさと診療所を閉めるのではなく、午後8時くらいまでは外来診療を続けてください、延長した時間帯は診療報酬を加算しましょう、という提案です。

 近頃「コンビニ診療」ともいわれる病院の夜間外来への飛び込み受診は、診療所が閉まった午後6時ごろから混み始めます。厚労省の調査では、診療所が開いていれば病院に行かないという患者も相当数いたそうです。診療所が夜間まで開いていれば、病院の夜間外来も緩和されると考えたわけです。

 それに加え、診療以外に医師が行っている事務作業を減らすため、作業を補助するメディカルクラークという職種を医療機関に配置した場合に、診療報酬を支払うことも検討します。カルテや院内の医療安全委員会に提出する資料のドラフト作成などを担うことを想定しています。米国ではすでに活躍しています。

●財源はどうする

 ただ、夜間延長した分の報酬を加算したり、メディカルクラークに報酬を支払うといっても財源はどうするのか。年末の予算編成で来年度の診療報酬の改定率がプラスになり、全体の額が増えればいいのですが、その保証はありません。このため厚労省は、現段階では、どこかを増やす場合にはどこかを減らし、帳尻を合わせる「差し引きゼロ」の視点で組み替え作業を進めています。

 そこで、減らす項目として目を付けられたのが、診療所の初診料と再診料です。

 診療所の初診料と再診料は、前回の06年度改定でも4点、2点それぞれ引き下げられました。その上、再診料に上乗せできた継続管理加算(5点)も廃止になっています。一方で病院の初診料は15点の引き上げとなり、初診料に関係した財源は病院、診療所の上げ下げによってほぼ相殺されました。また、再診料の引き下げで生み出した財源も産科、小児科などに充てられています。

 2回連続で、初診料と再診料を引き下げるという厚生労働省の方針に対し、当然のことながら日本医師会は猛反発しています。

●「開業医=高収入」

 ご覧になった方も多いかもしれませんが、つい先日、「開業医の報酬は勤務医の1.8倍」などという見出しの記事が相次いで掲載されました。

 来年度の診療報酬改定の参考にするため、厚労省が医療機関の経営状況を調査した医療経済実態調査に基づくものですが、これを読んだ人の間には「開業医=高収入」というイメージがあらためてすり込まれたのではないでしょうか。

 日本医師会は、記者会見などを通じて「開業医と勤務医の平均年齢は18歳離れており、比較するのは不適当」「開業医は経営リスクを負っている」などと、開業医は決して高収入でないと説明を重ねています。あまり意味のある説明だとは思えませんが、どの報道機関も日本医師会の反論を取り上げないのも公平性に問題があると思います。

 初診料、再診料の引き下げは、経済財政諮問会議、財務省、厚労省で一致し、外堀はすでに埋まっています。あとは、自民党の丹羽雄哉前総務会長をはじめとする厚生関係議員がどれだけ巻き返せるかどうかですが、恐らく難しいでしょう。


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