コラム「みんなの医療制度」 その11

後発医薬品の使用などで社会保障費を削減−08年度予算シーリング

 政府は2008年度予算の概算要求基準(シーリング)で、今年も社会保障費の伸びを2200億円削減するという申し合わせをしました。年末までにどのようにしてこの財源を工面するか、厚生労働省はまた頭を痛めるわけです。

 ここでシーリングとは何なのか、あらためて説明します。

 政府の次年度の予算案というのは、毎年1月に開会される通常国会で最優先で審議され、よほど混乱のない限り、3月中に可決、成立します。

 ただ、その前にはいろいろな調整が必要になります。予算の元締めはいうまでもなく財務省ですが、次年度に見込まれる税収(歳入)に対し、どの程度の支出(歳出)があるかを見極めなければなりません。

 このためにはまず、予想される歳入に見合った歳出の大枠を決める必要があります。この大枠をシーリングと呼びます。例年、前年の7月下旬から8月上旬に決定します。これに続き、各省庁は8月末までに財務省に対し、次年度に実施する事業に必要な予算を要求します。これが概算要求です。

●社会保障費は自然増が1兆円

 国の予算規模はだいたい歳入、歳出ともに80兆円規模ですが、医療や年金、介護の給付を中心にした社会保障費は20兆円を超えています。80兆円の歳出のうち、国の事業に使えない地方交付税や公債費(借金返済)を除いた一般歳出ベースでは全体の40%超を占めており、国家財政の大きな負担となっています。

 社会保障費は高齢化などにより、だいたい年に1兆円程度の自然増が見込まれます。国の税収の飛躍的な増加が見込めない中で、予算編成に当たる財務省にとってみれば、この伸びを少しでも抑えないと毎年の予算が組めない、というわけです。

 このため、シーリングではここ数年、社会保障費の1兆円程度の自然増のうち、2200億円を削るという申し合わせが続いています。冒頭で触れたように、08年度も同じような格好になりました。

 一口に2200億円といっても、そう簡単に削れるわけではありません。過去には診療報酬や介護報酬の引き下げ、高齢者の医療機関での窓口負担の引き上げ、経済動向と連動した年金給付の効率化などが実施されています。

 医療関係者にとっても最も関心が高いのは、やはり診療報酬改定です。診療報酬を1%下げると約800億円を削減できるといわれています。今回のシーリングの対象となる来年度は診療報酬改定が予定されているため、3%を引き下げれば単純に2400億円が削減できますが、そんなことをすれば国民医療が崩壊するのは間違いないでしょう。

●診療報酬の技術料の引き下げは困難

 診療報酬はここ3回にわたって引き上げがされていません。06年度に過去最大のマイナス3.16%の引き下げが行われたことは記憶に新しいところです。この間、看護師の争奪戦や勤務医の加重労働、医師の偏在など、主に医療を提供する側のさまざまな問題が表面化し、これ以上の引き下げは難しいとみられています。

 このため、厚生労働省はいまのところ、診療報酬のうち、患者や医療従事者に直接的な影響が少ない薬価の引き下げや、価格が比較的安い後発医薬品の使用を進めることで1000億円程度を削減する案などを検討しています。

 後発医薬品については、厚生労働省の中央社会保険医療協議会で使用を進めるための仕掛けづくりが進んでいます。06年度の診療報酬改定では医師の処方せん様式が変更され、後発医薬品を調剤できるチェック欄が設けられました(2006年度診療報酬改定のポイントM参照)が、さらに一歩進め、後発医薬品の使用を原則とし、使わない場合に限ってチェックするプランなども議論になっています。


English