コラム「みんなの医療制度」 その1

政治主導の朝令暮改−リハビリの診療報酬が「再改定」

 2006年度の診療報酬改定で導入されたリハビリの上限日数制限が4月から緩和されることになりました。厚生労働省の調査により、この上限日数制限により必要なリハビリを継続できないという患者、いわば「リハビリ難民」が全体の1割ほどいることが判明したからです。

 診療報酬改定は原則2年に1度で、通常は次回08年度の定期改定で対応するのが一般的です。ですが、今回はすぐに対応しました。背景には7月に選挙を控えた参院自民党の強い圧力もあり、自ら母親の介護経験がある政策審議会の舛添要一会長らは衆院を通さずに独自に厚労省に働きかけました。まあ理由はどうであれ、今回は良い意味の「朝令暮改」ととらえるべきではないでしょうか。

 このリハビリ再改定の内容に触れる前に、あらためて06年度の改定がどんなものだったか振り返ってみます。

●4疾患別に上限日数

 従来は理学、作業など療法別に点数付けをする仕組みだったのですが、効果もないリハビリをだらだらやるのは望ましくないという視点から、新たに「心大血管」「脳血管疾患等」「運動器」など4つの疾患別に再編し、発症後すぐの急性期リハビリを集中的に行うために90〜180日の上限日数を定めました。原則としてこの上限日数を過ぎれば、医療保険のリハビリは受けられなくなります。

 ただ、高次脳機能障害など、継続してこの疾患別リハビリを行うことで症状の改善が見込まれる一部の疾患については日数上限の対象外となる除外規定も設けました。ただ、基準があいまいであるため、医師からは「判断に悩む」などといった苦情も寄せられました。

 これに加え、この疾患別リハビリを受け継ぐ介護保険の維持期リハビリへのバトンタッチがうまくいきませんでした。患者に対する情報提供の不足もありましたが、そもそも40歳未満の患者は介護保険のサービスは受けられません。厚労省は情報提供を求める通知などを出しましたが、「必要なリハビリが受けられなくなった」などと不満が患者団体などに募り、それが厚労省の調査結果によって客観的に示されたわけです。

●新たな類型も

 そこで4月からの再改定では、日数制限の対象外となる除外規定にこれまで対象外だった急性心筋梗塞などの3疾患を追加し、さらに医師が「どうしても必要」と認める場合には疾患別リハビリを継続できるようになります。事実上、算定上限が撤廃されたと受け取れますが、その代わり、医師には、症状が改善すると判断する根拠や理由などを明確にするよう求めています。理由が不明確な場合は、医師は診療報酬が受け取れません。また、ポリオ後遺症などは改善の見込みがあるないにかかわらず継続できるようになります。

 さらに、介護保険の維持期リハビリが受けられない患者向けに新たに医療保険の「リハビリテーション医学管理料」という類型を設けました。集中型ではない介護保険の維持期リハでは、ニーズが満たせないという患者も受けることができます。ただ、あくまで暫定的な措置です。

●点数は逓減制に

 今回の再改定は、基本的にパッチワークによる応急措置であるためこうした除外規定だけでも複雑ですが、点数設定はもっと分かりにくくなりました。上限日数制限の緩和や新類型の新設によって医療費が増えないよう、疾患別リハの点数がある時期を過ぎると引き下げられる(逓減制)仕組みになるのです。

 たとえば、算定上限日数が180日の「脳血管疾患等」では、140日を過ぎると250点(人員などが手厚い場合)が210点になります。また、150日の「運動器」は、120日を過ぎると180点(同)が150点になります。この引き下げによって浮いた財源を新設部分に付け替えるわけで、医療費総額が変わらないようにします。行政用語では「財政中立」と呼びます。


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